第4委員会他都市調査

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2006年7月26日(水)~28日(金)
26日(水):福島市 新しい風ふくしま計画
27日(木):いわき市 アクアマリンふくしま視察
28日(金):仙台市 仙台駅東土地区画整理事業

1、新しい風ふくしま計画
 地方都市では少子高齢化、更に人口減少が始まり、都心部への人口回帰と中心市街地活性化が課題である。新しい風ふくしま計画は都心部活性化の計画である。 
1)中心市街地空洞対策の経緯
 福島市は明治になり県庁所在位置として地域の拠点として発展してきた。昭和45年の福島商業高校の郊外への移転に始まり、50年代には福島大学の郊外へ移転、60年代には県立医科大学及び付属病院の郊外移転、郊外の大型団地の形成、郊外大型店舗の立地等により、中心市街地の空洞化と中心市街地商業の低迷が始まった。更に、少子化、高齢化か中心市街地の人口減少に拍車を掛けた。このような状況で、福島市はにぎわいがある都市を目指して平成2年度に「24時間都市構想」を策定して、住商複合施設による都心部の人口回帰を目指した。その後、県の「市街化区域及び市街地調整区域の整備、開発又は保全の方針」(平成4年)、「福島地方拠点都市地域基本計画」(平成5年)、「福島地域21世紀活力圏創造整備計画」(平成8年)に拠点地区として中心市街地の整備が位置づけられてきた。
 福島市では、平成10年の中心市街地活性化法施行を受けて、学識経験者、市民団体、商業団体、国、県、市による福島市中心市街地活性化協議会を設けて基本計画を策定。同年中心市街地基本計画を策定し国・県に送付。平成12年に基本計画を変更、福島市TMO(中小小売商業高度化事業)構想が認定され、(株)福島まちづくりセンターがつくられた。商工会議所、商工団体、青年会議所、NPO、JA、国、市で「新しい風ふくしま懇談会」を設置、基本計画の推進をしてきた。平成15年に「新しい風ふくしま計画」として基本計画を変更し、今日に至っている。
 平成17年に福島県「商業まちづくり条例」制定により、県内の6千㎡以上の店舗の立地規制・調整が始まり、平成18年にはまちづくり3法(都市計画法、中心市街地活性化法、大型店舗立地法)が改正され、1万㎡以上の集客施設の立地規制ができるようなった。これらの状況を受けて、まちづくりについての検討がこれからなされる。

2)具体的な事業
 ハード面としては、中心市街地の空きビルや空き店舗などの既存施設の活用、公共施設の設置、住宅の複合施設、借り上げ市営住宅などである。ソフト面として福島市TMO構想に基づき、株式会社福島まちづくりセンターを設立し、商業振興の企画・調査・設計・コンサルタント、中心市街地での駐車場サービス、中心市街地共通ポイントサービス(利用ポイントによる換金サービス)事業、各種イベント、宅配サービスなどを行っている。

■ハード面として
①子どもの夢を育み施設「こむこむ」
 世代を超えた交流活動を推進する教育文化複合施設。
 図書館、多目的ホール、学習室、展示場、プラネタリウム等
 H.17.7オープン 事業費53.6億円(市単独事業)
②福島市男女共同参画センター「ウィズ・もとまち」と日祭日も利用できる行政窓口設置
 空きビルを利用することで経費削減と近隣商店街の活性化。
 交通結節点である駅そばで、利便性と回遊性を生み出す。
③福島駅西口複合施設「コラッセふくしま」
 展望ラウンジ、商工会議所等商工関連事業所、会議室、企画展示場、福島県経営支援プラザ・福島市産業交流プラザ、福島県パスポートセンター、福島県観光物産展、ふくしま情報ステーションなど、企業間の交流・インキュベート機能、コンベンション施設などビジネス創造支援など・
 ふくしま情報ステーションは「道の駅」と認定され、NPO法人に委託
 H.15.7オープン、事業費125億円(県・市・商工団体)
④障害者コミュニケーションサロン「まちなか夢工房」
 障がい者の自立支援と社会参加、市民との香料を図る。
 授産品の展示・販売、喫茶、交流スペース、視覚障がい者案内装置の設置等
 NPO法人に委託
空きビル・空き店舗の活用による経費削減と近隣商店街の活性化。
⑤借り上げ市営住宅(4団地 123戸)
 20年間市が民間住宅を借り上げ、市営住宅として提供
 H.16~入居
・曽根田団地(25戸)、新町団地(18戸) 住宅のみ
・早稲町団地(40戸)、TMOの複合事業、レストラン、店舗、コンベンション等と住 宅を併設
・中町団地(40戸) 
有料建築物等整備事業(国の補助事業)との複合事業
 クリニック、薬局、立体駐車場と住宅を併設

 住宅の確保と商業・医療施設等の複合化による街の賑わいを創出

⑥福島学院大学福島駅前キャンパス
H18.4オープン 事業費12億円、補助金8億円(県2億円、市4億円)
福祉学部3、4年生キャンパス、メンタルヘルスセンター等付属施設
 ラウンジ兼用オープンスタジオ、展示ホール、図書館など市民が利用できる施設、
 公開 授業・公開講座などの開設
 
 公益施設の設置による賑わいと大学生が行き交う街なかの賑わい創出

⑦栄恵町北地区優良建築物等整備事業
 民間事業者による事業(国の補助事業)
 地上16階、住宅87戸、福祉施設2ヶ所、クリニック5科、調剤薬局、コンビニ、
 立体駐車場(288台)

 高齢者向け福祉施設、医療施設をセットにした住宅提供による中心市街地への人口集積 を図り、街の賑わいを創出

■ソフト面
 TMOにより、共通駐車券サービス、共通ポイントカードサービス、共通バスサービス券の発行、宅配サービス、イベントの企画、まちなかイベントニュースの発行、共通ブランドの開発、人材育成などがある。
3)取り組みの結果
 人口減少が始まり、コンパクトシティとして中心市街地の居住者を増やし、限られた財源での行政効率を上げる、また、中心市街地への人口移動による街の賑わいの復活と雇用機会の創出が課題となっている。そのための公共施設や市民の利便施設の集中的な配置、低廉で良質の住宅の確保がなされている。これらの施策により、中心市街地の通行者が増え、中心市街地における人口・児童数も持ち直している。しかし、借り上げ市営住宅については新婚優先やファミリ世帯優先などの特段な施策はない。借り上げ市営の住宅数も現状では増やす計画はない。今後、中心市街地に人口回帰させるために、住宅確保の施策の推進が必要と思われる。また、環境政策として脱車社会に向けての施策、中心市街地の交通アクセスの整備、郊外からの住み替えをどのように進めるか課題がある。まちづくり3法や県条例を活用し、大型商業施設の郊外での出店規制と中心市街地への出店誘導策が課題である。

4)まとめ
 福岡市と福島市が置かれている状況は異なるが、住宅と商業施設、医療施設や公共施設との複合施設の配置など、福島市の中心市街地活性化施策は、現在進められている香椎駅周辺土地区画整理事業などの副都心における中心市街地活性化の参考になると考えられる。

2、アクアマリンふくしま(水族館)
1)施設概要
 福島県いわき市小名浜港の埠頭の一部を埋め立て、水族館及び物産館を建設。水族館は福島県が整備、運営は財団法人ふくしま海洋科学館が行っている。小名浜港は商業捕鯨の基地であり、地域振興策として建設されたと思われる。
面積:28,506㎡
事業費:本館156億円、分館4億円、
    ビオトープ(淡水2,800㎡、海水1,500㎡)3千万円
収支:入館料8億円、売店・食堂売り上げ3億円、県委託料6億円、その他3億円
   計20億円
支出:一般会計16億円、基金会計1億円、付帯事業3億円、計20億円
入場料:大人1600円、小~高校生1300円、
    年間パスポート:大人3800円、小~高校生1900円
職員:総務部4課、飼育管理部5課 計80名
ボランテア:230名

2000年開業、開業年には116万人の入場者があったが、徐々に減り、昨年は少し持ち直し、82万人程度となっている。常に投資しなければ来館者は減る。同じ時期に開館した施設に比べると、来館者は多い。

2)展示について
 この水族館の特徴は、学際的な生態展示と子どもの好奇心を育てる仕掛けを作っている。商業捕鯨の基地であったことから資源管理と利用についての研究をしている。アクアマリンふくしまの特徴として
①ノンカリスマ性
 希少な魚の研究ではなく、身近な魚の研究・展示を中心にしている。いわきの魚であるメヒカリやサンマ、鰯、トビウオなどの研究をしている。
②博物学と生態学、文化人類学の融合
 生命の進化の説明と進化に添った展示、その延長上でのインドネシア海域のシーラカンスの調査、生態の撮影、標本展示。親潮と黒潮の源流域の植生や陸域海域の動植物の生態展示。北太平洋の海獣やほ乳類、鳥類も展示。人間と自然の係わりとして縄文遺跡の展示、生活道具の展示。
③子どもの目線の展示と遊びによる学習。教育学、児童心理学、社会学、文化人類学の活用。
 子どもの好奇心が育つ展示としてのキッズアクアリウム。湿地や干潟などのビオトープを併設による遊びのなかでの生態学の学習。
④阿武隈川流域を中心に、黒潮の源流域と親潮の源流域を盆栽のような手法で小宇宙を表現。沿岸部の潮目の環境を再現。
⑤直接日光を入れて展示。建物全体がガラス張り。直接日光を水槽や庭園に入れるために、管理が大変になっている。
⑥ボランテアによる施設の運営。
 230名の登録。1日20人のボランテアが活動。

3)まとめ
 生命の進化に添った展示、いわきの自然環境の成り立ちを黒潮の源流域、黒潮の海洋生物や植物の生態展示、親潮の海洋生物(漁流だけでなく海獣や鳥類など)や海藻など展示によって理解を深め、人間と自然の関わりを縄文遺跡の展示や生活用具の展示で理解を深めるなど、総合科学としての水族館、子どもの好奇心を育てるキッズアクアリウムなど、福岡市立動植物園の建て替えに非常に参考になると思った。動植物園も単なる展示ではなく、地域の自然を理解し、人間と自然の関わりが理解でき、生命の多様性が理解できる、大人でもわくわくする、博物学や文化人類学などが融合する学際的な動植物園にすべきである。
 課題としては、常に新しい企画と投資が必要であり、またビオトープなど子どもが直接自然体験できる施設としては管理の費用がかかること、収支のバランスをどう取っていくかが課題である。世界には400の水族館があり、日本には70の水族館がある。そのうち半数は民営である。民間で維持できていることから、市民と職員の知恵を絞れば楽しい施設は可能と思われる。 

3、仙台駅東土地区画整理事業
1)事業概要
 仙台駅東部地域はこれまで、新寺地区、仙台駅東第一地と順次市施工の土地区画整理事業として整備してきた。対象地域は戦災を受けなかった地域で、城下町の街割りに由来する短冊形の住宅が多く、裏路地が多く存在し狭隘な道路が多い。土地区画整理事業により40m道路による仙台駅を挟む東西地区を結び、また事業区域に南北線2本の道路を整備することで交通渋滞を緩和するとしている。整備後は都心機能の集積と都心居住促進として、商業・業務地区43.8ヘクタールと近隣商業地区及び住宅地区1.5ヘクタールとしている。
 総事業費791億円、内市負担金209億6400万円、市単独事業費223億5200万円。対象面積は45.3ヘクタール、道路・公園等公有地は施行前10.92%から施工後35.27%へ、公共減歩率は27.3%のうち原価補償金160億4千万円で面積40,668㎡の買収による減歩緩和で19.2%になっている。30㎡未満は換地不交付として清算金で対応、100㎡未満の土地は無減歩とし清算金を徴収、減歩後100㎡未満になる土地は100㎡として、その差異は清算金で処理する。

2)抱える問題点
 土地区画整理事業に対する反対が強く、昭和59年に地元住民は用買方式を要求して計画の白紙撤回を要求した。昭和62年条件について協議を進め、63年に都市計画決定をした。しかし、その後も反対が強く、平成7~8年に行った仮換地指定において107件の行政不服審査が行われた。全ての裁決が終了するのに平成14年までかかった。これらの経過により、事業年度は平成25年まで延びている。平成17年末時点の事業の進捗状況は事業費ベースで68.9%、仮換地指定率は98.5%、まだ10件が相続問題や納得していないために済んでいない。
 事業は一定進んできたが、土地利用について問題が残っている。業務・商業地は経済動向から需要が見込めない状況であったため、住宅への利用が進んでいる。しかも、地価が高いために分譲よりも賃貸が多く、現在建設されている中高層ビル59棟1900戸のうち賃貸が83%、更に賃貸の60%がワンルームマンション となっている。現時点では地区計画をかけてないために土地利用は規制されていない。このままではコミュニテイ復活ができなくなる恐れがあり、地元の街づくり活動のなかで土地の共同化などを考えている。

3)まとめ
 このような説明を受け、良好な街並みを形成し、地域コミュニティを復活させるためには早めに地区計画をする必要があると思った。また、土地区画整理については公共減歩に対する批判があり、仙台市でも事業の遅れを生じている。この背景には住民と充分なまちづくりについての協議がなっかたのではないかと感じた。戦災を受けず藩政時代の町割りが残っていたと云うことを考えると、土地区画整理の必要があったのか疑問を感じた。道路の整備であれば、別の選択を検討すべきであり、歴史的景観を生かすことが検討されたのか疑問を感じた。福岡市においても同じ過ちを繰り返してきたことを改めて思い起こした。