2006年度予算で人工島に水深15メートルのバースをつくる予算が計上された。しかし、大水深のバースを造る意味はない。物流が大きく変わり、博多港には大型船の寄港が減っている。コンテナの取扱量は増えているが、その多くは近距離の東アジア(中国・韓国)である。船の大きさも1万トン以下が増えており、大水深のバースは必要ない。福岡市は世界的な傾向としてコンテナ船が大型化していると言うが、そのことが逆に博多港のような港には寄港しない理由となっている。コンテナ船が大型化することでより、ハブ港には寄るがそれ以外は寄港しない。博多港における北米航路および欧州航路が減少していることはその現れである。同時に博多港の外貿コンテナ船が1万トン前後が増えている理由として、フィダー化しているためである。
また、1万トン以下の船が増えている背景には、近距離の中国・上海などからにがきていることによる。近距離で小回りがきく効率的な輸送になっている。物流は現地で目的別ごとにコンテナ仕分けして輸出するため、従来のように港で荷下ろし、港で仕分けして目的地別に運ぶことはなくなっている。RORO船がその最たるものである。このことは、大水深のバースが必要ないだけでなく、ガントリクレーンや上屋が必要なくなっている。そして、これはヤードや倉庫用地が必要ないことを意味し、今後人工島の港湾区域の土地需要がないことを意味する。
人工島の港湾施設は現状でも過剰な港湾設備となっている。加えて今回の水深15メートルの岸壁は全くのムダな投資である。今後、港湾特別会計は土地が売れない、過剰な施設に対し施設の需要がないことから、確実に赤字を産みだすことになる。物流の現状を無視した勝手なハブ港湾の願望・空想による港湾整備は、市民に多大な借金を負わせることになる。北九州響灘港と同じく、玄界灘に夢が沈む。誰がこの責任を取るのか。
※RORO船:コンテナを牽引したトラックで船内に搬入し、コンテナが載った荷台だけを切り離して積み込む。到着港では、トラックを船に乗り入れ、コンテナが載った荷台に繋ぎそのまま目的地へコンテナを運ぶ方式のコンテナ船。
外貿コンテナ船入港船隻数
01 02 03 04 05
全体 5345 5412 5923 6135 6213
3万トン以上 282 211 151 119 136
6万トン以上 70 81 48 45 26
人工島14mバース 3万トン以上のコンテナ船の利用はない
欧米航路
99年 12航路 44便
06年 4航路 14便
近距離(中・韓)
99年 10航路 56便
06年 38航路 200便
取扱地域別
02年 49万TEU
アジア 30万TEU(東アジア:22万TEU)
欧米 14万TEU
06年 62万TEU
アジア 48万TEU(東アジア:38万TEU)
欧米 10万TEU