他都市調査

Pocket

他都市調査
2006年1月23日(月)、24日(火)
■23日(月)千葉県:県住宅供給公社特定調停について

1、県住宅供給公社の特定調停に至までの経緯および特定調停の概要
1)千葉県住宅供給湖者の事業は
 昭和28年財団法人千葉県住宅協会と発足、昭和40年11月地方住宅公社法に基づく公社に改組。
①公社賃貸住宅事業(管理戸数1,195戸)
②特定優良賃貸住宅事業(管理戸数2,565戸)
③宅地分譲住宅(現時点で保有する完成住宅地1,314区画、その他土地約99㌶)

2)特定調停に至る経緯
 平成15年3月および9月に民間金融機関11行および住宅金融公社からの借入金についての返済について協議するに当たり、土地建物簿価約940億円を時価で評価すると約299億円しかならないことが分かり、大幅な債務超過が判明。借り換えについて民間金融機関は県の債務保証を要求したが、県は民事調停を選択、裁判所へ平成16年2月2日に申請。調停が成立せず同年10月25日に裁判所は民事調停法第17条に基づく決定を行い、平成17年1月21日までに異議申し立てがなかったために確定。県はこれに先立つ12月16日に臨時議会を開き、裁判所の決定の受け入れと公社への約300億円の貸付の補正予算を議決した。
 
3)調停の内容
①平成15年9月30日時点の資産
 a簿価                 b時価
  流動資産   約  610億円    流動資産   約  241億円
  固定資産   約  478億円    固定資産   約  160億円
  合  計   約1,088億円    合  計   約  401億円

②平成15年9月30日時点の負債
 金融機関等借入金       約  904億円
 預かり保証金(敷金・保証金) 約   11億円
 その他            約   54億円
 合 計            約  970億円

③民事調停法17条決定
 民間金融機関の債務 714億円のうち321億円余を債務免除(45%放棄)
           392億円余について18年3月31日までに3回に分けて返済
            
 住宅金融公庫    154億円全額 弁済機関を40年に延長(平成57年3月)
           利息は年0.15%に減額

 県         47億円は金融機関および金融公庫への返済後返済、それまでは           利息は免除 

④県の支援策     
 ・公社に返済資金として300億円を貸し付ける、利息は0.02%
・流山木地区の土地区画整理事業を県が引き継ぐ

2、原因
①分譲住宅が事業の大きな部分を占めていること
 平成4年からの地価下落により、高度成長期にストックしてきた大量の宅地が地価下落、デフレ経済が進行する中で処分が進まず不良在庫として蓄積し、有利子負債を抱える原因となった。その主なものとして
a米沢団地
 郊外型団地として土地を購入したが簿価が182億円に達し、開発に多額な費用が必要であり事業を断念。原野のまま処分する計画となっているが、回収は厳しい。 
b流山木地区
 土地区画整理事業と住宅建設を併せて行うもので、約15㌶の土地を先行取得、簿価は約191億円。土地区画整理事業には中期に時間を必要とすることから事業を県に移管。

②特定優良賃貸住宅事業の問題
 特定優良賃貸住宅は土地所有者が建築した建物を借り上げ、家賃補助を行い中堅サラリーマン等に貸し付けるものである。この制度は20年の借り上げ契約となっていることことから、所有者には確実に家賃収入が補償される。しかし、家賃平均3.5%毎年上昇するため、年数が経過するに従い空きが増えている。その結果公社が赤字を抱える状況になっている。平成16年度で約6億円の赤字となっているという。受託事業が少なく安定的な収入が少ないため、特定有料受託事業の赤字も負担となっている。公社としては所有者に借り上げ料の引き下げを求め、応じない場合には特定調停等法的措置も講じているという。また、家賃引き下げのための借り上げ料についての県補助制度も活用し赤字削減にと輪組んでいる。

③その他として、経済状況の変化に対して経営が対応できなかった
 平成13年に「第1次公社経営改革計画」を策定し、経費削減に取り組んだが経営実態の認識が不十分で充分な成果が上がらなかった。平成14年12月に県は公社等外郭団体に見直し方針を定め、平成15年3月二行は「経営改善計画骨子」を定めて保有土地の早期処分による有利子負債の圧縮と賃貸住宅管理事業の収益向上、更なる経費削減を図ったが追いつかなかった。

3、今後の事業計画および見通し
 この後の方針は
①民間のノウハウを活用して保有土地の早期処分(原則平成26年まで)
②分譲住宅事業からの撤退と県営住宅管理等の受託事業による安定した収入の確保
③賃貸住宅事業の収益向上(特優賃の借り上げ料の引き下げ、家賃収納率向上、入居率向上)
④人員削減、給与の削減等の合理化
⑤民間からの役員(2名)および民間からのアドバイザー(5名)を採用
⑥千葉県住宅供給公社経営管理員会を設置、事業を管理・指導
 委員長:副知事、 委員:関係各部局担当職員10名

4、まとめ
 バブル経済がはじけたにもかかわらず、経営転換ができないまま分譲事業を継続し、地価下落の中で負債が膨らんだという経緯は、他の開発事業も同じである。経済・社会状況の変化に対する認識の甘さは、収益事業を官が行うことの本質的問題を示している。戦後の住宅供給事業の必要性があったとしても、あくまでも分譲ではなく、良質で安価な賃貸住宅を事業の中心にすべきではなかったかと考える。
 県による公社への300億円の貸付による決着は、不動産資産の処分を千葉県が肩代わりするということで決着したと言える。千葉住宅供給公社は県営住宅の受託事業を始めるということで安定的な収入源を確保するということであるが、土地処分は今後も厳しく、県民負担にならないように保有土地の処分を進めるするために民間事業者等を役員やアドバイザーに入れるなどの対策をしている。人工島の土地処分がいかに厳しいかこれらを見ても明らかである。

24日(火)福島県:福島県商業まちづくりの推進に関する条例について
1、条例制定に至った経緯
 福島県において中心市街地における大型スーパーが倒産、撤退があいつぎ、中心市街地の空洞化が問題となっていた。県では平成10年に中心市街地活性化対策本部を設置、平成13年まちづくり懇談会を設置し、振興策と調整策について検討を進めてきた。
 振興策として、平成14年度に街なか再生三事業として振興策を講じる事業者に対する①固定資産税の不均一課税、②補助、③融資の事業を始めた。条例制定後平成17年11月から係長級で「福島の新しいまちづくりチーム」を設置してまちづくり推進。
 調整策として、平成14年6月~15年2月まで大規模集客施設広域調整検討分科会(15回開催)、平成15年7月~平成16年3月広域まちづくり検討会(8回開催)で市町村や事業者の意見を聞き、基本構想を作り、条例の原案の提言を受ける。条例案について平成17年3月~4月に県民からパブリックコメントを行った。平成17年4月に関係部の課長級の参事で「まちづくり推進プロジェクトチーム」を設置し条例を準備、平成17年10月条例制定。平成18年10月1日施行に向けて商業のまちづくり基本方針等の整備を進めている。

2、街づくりの考え方
 条例についてのパブリックコメントでは、中心市街地の事業者救済ではないか、需給調整ではないかという声が多く出されていた。県はこの条例は需給調整ではなく、まちづくりであるということである。あらかじめ「商業のまちづくり基本方針」でもって出店抑制をすべき地域を定めることで、秩序ある街を形成すというものである。少子高齢化社会、人口減少を前提に、コンパクトな市街地形成を図ることで、社会資本の効率的な投資と、過度に車に頼らない街づくりを目指す。そのためには、郊外への無秩序な商業施設の分散を規制し、同時に中心市街地の活性策を官民協働で進めるというものである。活性化策は既に実験され成功例があるが、基本は地域の事業者の意欲と、市町村の構想がなければ難しい。
 県では、県内を7のエリアに分け、地域の特性にあった活性化策を進められるよう基本方針を定めるという。市町村は県の基本方針に基づき「商業のまちづくり基本構想」を作り、市町村のまちづくりを進めることになる。

3、他の法律との関係
 この条例では、立地の適否を定めているため大店舗立地法等の手続きを始める前に届け出行うように求めている。需給調整でないため、あらかじめ県の商業まちづくり審議会が定める基本方針、市町村の基本構想に則った出店計画でなければならない。都市計画法での用途指定ではカバーできない部分をまちづくりという視点から規制をかけている。市町村は都市計画において特別用途地区として網をかけることはできるが、広域的な調整が難しいことからこの条例が作られている。熊本県では条例ではないが、ガイドラインということで事業者を行政指導している。

4条例の効力
 対象は売り場面積6000㎡以上の小売店となっている。事業者は県、市町村の土地利用計画との整合性や交通機関等の利用について、また地域貢献策について提出し、立地する場所に隣接する市町村および影響を受けるとされる関係市町村、県の意見を聞かなければならない。また、住民に対する説明会を開催し、住民の意見ついて答えなければならない。
 申請手続きをしな意、又は虚偽の申請をした場合は20万円以下の罰金刑がある。また、県の意見に対して正当な理由無く従わなければ審議会の意見を聞いて勧告を行い、勧告に従わなければ氏名の公表を行う。また、県が意見を述べたときはその意見に回答した日から2ヶ月間は工事できないことになっており、これに反したときは工事中止勧告を行い、勧告に従わなければ氏名を公表するとなっている。手続きに関しては全て公開され、企業の社会的責任を問うことで、この条例を遵守させるとしている。

5、まとめ 
 無秩序な郊外型店舗の拡大によって中心市街地の空洞化が起こっている。企業の都合で出店と撤退がなされることで、地域の生活基盤そのものが破壊されてきた事実は枚挙にいとまがない。市街地の事業者の努力は大前提であるが、郊外に商業施設が拡散することで、中心市街地の空洞化とともに街の生活基盤が崩壊している。高齢化が進み、人口減少が進むなかで、このまま放置することは将来都市そのものが崩壊するという危機感は当然のことである。同時、地方自治体としても社会資本の投資の拡大が余儀なくされ、今後の厳しい財政状況を考えれば、コンパクトな街づくりを志向することは当然である。
 都市機能を維持し、住民の生活基盤を補償するため欧米では大規模店舗の出店規制は政策的に行われている。国でも数度にわたり調査が行われてきた。今国会ではまちづくり三法の改正が俎上に載っているということであるが、街づくりの視点から総合的な法体系が必要である。