北九州市皇后崎スーパーごみ発電についての調査から
福岡市でも来年4月から東部清掃工場で第三セクターによるごみ発電が始まる。福岡市におけるごみ発電の事業を検証するために、北九州市八幡西区皇后崎のスーパーごみ発電施設について調査をした。
1)皇后崎スーパーごみ発電(ガスタービン発電との組み合わせによる発電)
焼却炉270トン/日×3、最大処理能力810トン/日、連続焼却式ストーカ炉の施設である。平成10年7月から可動、総事業費345億円(施設のみ)。発電は焼却炉の排ガスによる蒸気を使って発電する蒸気タービン発電機と天然ガスを使って発電するガスタービン発電機の組み合わせの発電システムである。ガスタービン発電機は8億円、蒸気タービン発電機は18億円である。
スーパー発電の仕組みは、ガスタービン発電機の排ガスで、焼却炉で熱交換した蒸気を更に加熱し、蒸気タービンの発電効率を上げる。焼却炉で熱交換した蒸気の温度は約270度、この蒸気を独立過熱器でガスタービン発電機の排ガス(約530度)で約350度に過熱し、蒸気タービン発電機に送り発電する。通常蒸気タービン発電では発電効率は15%であるが、ガスタービン発電と組み合わせることで発電効率を26%にあげている。
ガスタービン発電機は8,000kw、蒸気タービン発電機は28,300kw、計36,300kwの能力がある。この数値はごみが3,000カロリー/kgの場合で、実際は2,400カロリー/kg程度しかないため発電量は約26,000kw、そのうち約6,000kwを焼却場および隣の汚水処理場で使用、約20,000kっを給電に売っている。ガスタービン発電機は高く売れる昼間だけしか稼働させない。このスーパー発電方式は古くなっている。現在は焼却炉の排ガスに対して腐食に強いステンレス製の熱交換機がつくられており、蒸気温度を高くでき、圧力も上げることが可能になり、発電効率を21%程度まで上げることが出来る。そのため、ガスタービン発電機との組み合わせをせずに蒸気タービン発電機だけで発電している。スーパー発電方式は全国で4ヶ所ということである。
国の補助の条件で、発電部分は特別会計になっている。発電に関与する技術者と管理部門の人件費を特別会計から支出されている。売電の収支は他の2施設を合わせて年間約16億円、支出は14億円、差し引き2億円の黒字となっている。剰余金は基金として積み立てている。
焼却場は市職員20名、委託職員49名で運営されている。炉はメンテナンスのために年間40~50日しか止めないということで、稼働率は90%超えている。炉を止めたり稼働させたりを繰り返すと炉の傷みが早いということである。耐用年数も15年に1度補修をして30年以上稼働させる計画という。排ガスはバグフィルターで処理している。福岡市は稼働率を73%、耐用年数20年としているが、北九州市と比べて見るといかに無駄な事業をしているか一目瞭然である。
2)福岡市のごみ発電
福岡市では東部清掃工場の建て替えにともない、株式会社福岡クリーンエナジー(福岡市51%出資の第三セクター)によるごみ発電を計画している。300t/日×3=900t/日、ストーカー炉方式、蒸気タービン発電、最大蒸気温度400℃、最大発電量は29,200kw(発電炭坑率20.05%)となっている。北九州市の例から見ると、燃やすごみのカロリーが計画の8割程度であれば発電は65%程度であり、ごみ質と稼働状況は福岡クリーンエナジーの収支計画に大きく影響することとなる。ごみ減量とごみ発電が矛盾することがこれからも見えてくる。ごみの燃焼カロリーを高くするためにはプラスチック類を燃やさないといけないため、プラスチックの分別収集はごみ発電を阻害する。
福岡市は現時点でも過剰な焼却炉を抱えており、大野城市と太宰府市から1日140tのごみを受け入れている。大野城市では福岡市で焼却するために、これまで計画していたプラスチックの分別収集をやめると聞いている。ごみ発電がごみ減量の取り組みにブレーキをかけ、プラスチック類を燃やすことでダイオキシンを発生させ、環境汚染を進めることになる。福岡市は現状でも処理料の1.5倍の処理施設を持っているにもかかわらず、南部清掃工場について建て替える計画を進めている。ごみ減量を進めるとしていることと矛盾しており、更に、ごみ発電がいかにも環境に優しいかのような宣伝をしているのは問題である。ごみを減らすことが最も重要であり、焼却炉も減らすべきである。ごみ発電を焼却炉建設の理由にすることは問題である。