6月定例議会
2005年6月14日(火)~22日(木)
6月議会の主な議案は、震災復興の追加補正予算案と、一般議案として個人情報保護条例改正、政令改正にともなう消防団員の費用弁償の値上げなど待遇改善の条例改正、地方税制改正にともなう市税条例改正、第3子優遇事業に関する条例案、葬祭場の指定管理者をくらしの環境財団に指定することなどであった。
6月14日(火)
議案質疑
1、個人情報保護条例改正に関連して住民基本台帳の大量閲覧規制を求めた。
今回の個人情報保護条例改正案は、実施機関である市および議会、委託事業者に、個人情報を集める目的あを明示させるなど取扱の強化および事業者、市民に個人情報保護を求めている。そこで、個人情報保護の強化と関連して、法定受託事務である住民基本台帳閲覧に関して営利目的の大量閲覧を規制することを求めた。市は平成15年10月から事務処理等要綱を見直して、2週間前の申し込み、1週間に1度、1回2時間以内、閲覧者は1名、法人の場合は会社のパンフレットなどの提出、閲覧者は運転免許署などで本人確認する、誓約書を取る、などの措置をしているが、住民基本台帳法で閲覧の自由が許されているので規制は出来ないと答えている。しかし、住民基本台帳法では不当な請求であるときには市町村長は閲覧を拒否することが出来、いくつかの自治体では規制する条例を作っている。重ねて規制を求めたが、現法では限界であると認識しており、国も検討しているので国の動向を持ちたい、同時に現在の措置が有効か検証していきたいと答えるにとどまった。
2、葬祭場の管理をくらしの環境財団にすることに反対して質問
なぜくらしの環境財団を指定管理者に指定するのかという質問に、市は継続性、安定性、低コスト、費用の平準化が出来ると答えている。しかし、なぜくらしの環境財団でなければいけないのか、その理由はくらしの財団存続ありきであった。包括外部監査では、くらしの財団は収益事業のウエイトが高く、また競争性がなく、大きな収益を上げており、市民に還元する仕組みがなく、公益法人から株式会社にすべきと指摘され、抜本的改革が求めている。このような包括外部監査の指摘をかわすため、市は炉の数34基という過大な葬祭場改築計画を立て、市の事業であるにもかかわらず、経費の平準化と称してくらしの財団に建設させ、市が買い取り、管理はくらしの財団に委託させるといういびつなことを計画したことに問題がある。また、葬祭場建設の契約額も53億円にもかかわらず特命随意契約をするという不透明な状況がある。このような不透明な関係は問題であり、くらしの環境財団を指定管理者に指定することはやめて直営にするべきであり、過大な葬祭場改装計画の見直しを求めた。市の答弁は同じ答弁を繰り返すだけであった。
3、補正予算案に関連して住宅再建支援金の年齢・所得要件等の撤廃と無駄な公共事業・人工島中止を求めた。
震災特別委員会でも、また6月議会でも多くの議員が震災住宅再建支援金の年齢・所得要件などの撤廃を求めている。福岡市民の7割以上は共同住宅に住んでおり、マンション再建は都心部におけるコミュニティ再建に必要な事業である。このことは市長も先の特別委員会でも認められている。しかし、現制度では実際には役に立たない制度となっており、制度の見直しが多数の議員から求めている。地方分権社会を迎え、地方自治体は自立した意志を持つべきであり、国の施策の補完的施策ということではなく、市独自の施策として、市民の生活再建支援策を行うことを求めた。年齢・所得制限をなくしたとしても7億円程度と市は答えており、9月予定の緑化フェアに28億円も使うことから見ても、福岡市の厳しい財政状況でも、年齢・所得要件撤廃は可能である。しかし、市は国の施策の補完であり、困窮者に対する支援ということを繰り返した。
いま最重点でしなければいけないことはいうまでもなく震災復興であり、今後想定される直下型の大地震にそなえることである。今回の震災により新たに134億円が起債され、今後の玄界島の復興、また耐震診断や耐震補強や食糧の備蓄など震災対策に多くのお金が必要となっている。現時点で、年度末の市債発行残高は2兆6900億円、最終的には更に増えると考えられ、厳しい財政状況の中で、どこに優先的に税金を使うのか、改めて問われている。このような中、銀行でさえ見放している、破綻が明らかな人工島事業のこれ以上税金を使うべきではない。まして雁ノ巣に新福岡空港建設やオリンピック招致を今この時期に提起することは問題である。今後の震災復興、そして震災対策に多大な費用を要する中で、無駄な公共事業、人工島中止をすべきではないかという質問に、市長は震災復興は最重点課題といいつつ、厳しい財政状況の中で、政策の選択と集中を行い必要な都市基盤の整備を行うと人工島事業継続することを翻さなかった。
6月17日(金)
一般質問
1、松山2丁目三和エステートのワンルームマンション建設問題について
三和エステートは城南区松山2丁目の住宅街に、約100坪の宅地に2棟16戸のワンルームマンション建設し販売する計画をしている。条例上、10戸を超える住宅には駐車場が義務づけられているが、三和エステートは土地は一括して購入していながら、建築主の名義を会社名義と社員名義に2分割して建築申請をすることで駐車場設置を逃れようとしている。これは明に脱法行為である。
しかも、住民への説明をする前に販売広告を出しており、お互いの誠意ある話し合いで紛争を解決することを目的とする「建築紛争の予防と調整に関する条例」そのものをないがしろにする悪質な行為をしている。この業者は、そもそも話し合いの意思があるとは考えられず、住民に対する説明と市への報告は異なる報告をしているなど極めて悪質な業者である。
この件については3人の議員が質問したが、建築局長は分割された建物を同一人物が購入すれば結果として条例違反になると答えている。しかし、厳しい措置を求めたが、具体的に指導をどうするのか答えていない。このような脱法行為を認めれば、良好な住環境は維持できなくなり、劣悪な住宅が街に溢れることになる。住環境を悪化させない対策として、市は住民に「地区協定」をむすぶよう指導し、住民も「地区協定」づくりに取り組んでいる。住環境を守るためには脱法行為を許さない条例改正が必要である。
2、人工島の土壌汚染調査および今後の対策について
去る5月27日に人工島における土壌調査専門委員会が開催され、ヒ素が土壌汚染対策法の基準を上回っていることが分かった。しかし、専門委員会は基準を上回った数値は溶出試験の結果であり人工島では井戸水を使わないので問題がない。また、含有試験の数値は九州北部の土壌で検出される程度であり、自然由来と考えられるから特に対処する必要はないとした。しかし、なぜ土壌汚染対策法に基準が定められているのか、当然予防すべき認識があるかである。基準は大人の基準であり、乳幼児は大人の10倍以上厳しく見なくてはいけない。今回の調査地点は住宅地と学校用地、公園であり、以下の点を質問した。
①リスクを負うものは委員会のメンバーでもなく、港湾局の職員でもない。リスクを負うものは土地を購入する方であり、学校や公園を利用する児童である。事実をキチンと伝えて選択が出来るようにすべき。
②影響の受けやすさ、摂取する時間や量から最も影響を受けるものは人工島に居住する乳幼児、学校に通う児童である。土壌対策法の対象にならないとしても対策を取るべき。
この質問に、港湾局は情報はキチンと知らせるが、自然に由来すると考えられ問題ないので何ら対処する必要はないと答えた。福岡市は市民の安全よりも土地を売ることしか考えていないのである。
3、新福岡空港建設を雁ノ巣として検討していることについて
新聞報道された「住民投票をしてでも新福岡空港を雁ノ巣につくりたい」という市長の発言について以下の質問をした。
①パブリック・インボブルメントが行われようとしている現在、市長の「雁ノ巣に新福岡空港を作りたい」という発言は、これまでの民主的な手続きを全て否定するのではないのか。また、なぜ、この時期にこのような発言したのか。
②市長がこだわる雁ノ巣に新福岡空港を造る必要性について。
③4月の臨時議会において、市長は人工島建設の是非を問う住民投票条例は必要ないという意見をつけた。さらに、「住民投票と自治都市とは関係ない」発言。住民投票とは市長にとってどのような意味があるのか。
担当の総務企画局長は、福岡市では具体的には検討しておらずパブリックインボルメントの手続きに則って進めるが、今後新空港建設の可能性があるので検討していくと苦しい答弁をしている。住民投票については議会制民主主義の補完であり、必要だと弁解をした。また市長は、市長として将来構想を持つのは当然と居直った。
なぜパブリック・インボルブメントが始まるこの時期に雁ノ巣案を出したのか、市長が発言する意味を考えると、「結論ありき」でパブリック・インボルブメントは単なる市民のガス抜きでしかない。市民を馬鹿にしている。また、雁ノ巣案にこだわっている理由は人工島へ鉄軌道を繋ぎ、人工島の土地処分を進めるために、力ずくでも新空港を作ろうと考えている。いずれにしても、オリンピック誘致など、市長の思いつき発言に事務局が振り回されている。
6月20日(月)
第4委員会
消防局、建築局
1、消防局
議案は震災関連の補正予算案および政令改正にともなう消防団員の待遇改善の条例改正である。補正予算案は舞鶴3丁目にある福岡市消防本部の震災被害復旧のための補正予算と震災救援によるヘリコプターの塵芥吸い込みによるエンジン故障、御笠川改修にともない貯水槽の移転の費用である。
消防本部の被害は、基準の1.5倍の強度で設計しているため建物そのものの被害はなく、内部機器の被害もなかった。被害は外壁と、建物周辺の地盤沈下による路面、ホース干し施設ということであった。本会議でも指摘があったように、消防本部は活断層の真上にあり、かつ市庁舎と近い位置にあるため、万が一激震により甚大な被害を受けた場合を考え、将来の移転および指揮できる場所を他に設ける必要があるのではと尋ねた。これに答えて、背振の中継所に万が一の時には消防に関しては指揮できるようになっているということであったが、やはり市内の他の場所に指揮が出来る施設を設けることを要望した。
2、建築局
建築局所管の議案は震災による市営住宅補修の追加、ブロック塀の調査の追加、カモメ広場の仮設住宅周辺整備の費用および、建築基準法改正による既存不適格建築物の増改築についの確認申請の手数料を新設する建築関係手数料条例改正であった。市営住宅補修については5月臨時議会で補正予算が議決されていたが、その追加の補正である。ブロック塀の調査については、4月9日から14に亘り、中億の商業地区など人通りが多い通路について調査した。1500ヶ所を調査し、約4割の545ヶ所にひび割れや傾きなど問題があった。今後、香椎、大橋、西新、小中学校など拡大する。建築基準法の基準を満たせば倒壊はないが、全てのブロック塀が適用対象にないこともあり、全体を考える必要がある。私は安全性、景観や都市緑化の視点から総合的に考えるべきであり、街づくりとして塀は生け垣やフェンスに替えるよう政策的に進めることを求めた。
既存不適格建築物の改修について質問した。従来、新法施行前に建てられた不適格建築物は、増改築をする場合は全てを新法に適合するように改築しなければいけなかったものが、今回法律改正により、改修する場合は複数回に分けて改築し、適合させることが出来るようになった。その場合は全体計画の認証が必要で、この認証にともなう手数料を新たに設けることとなった。条例改正はこのことによる。
この後、市住宅の滞納者に対する訴えの専決処分について報告があった。市営住宅の滞納の額は4億円、毎年不能欠損額は約2000万円ほど起こっており、この件について正直者がソンをする状況ではないかという意見があった。市によると、家賃滞納による住宅明け渡し訴訟は年々増える傾向にあり、そのうち最終的に支払いが出来ず強制執行される件数も増える傾向にあるという。多くの場合は滞納額が大きくなり過ぎ、支払いが出来なるケースが多いということである。強制執行された入居者の多くは知人や親族を頼るケースが多いが、その後の経過については市は把握していないという。ホームレスの方が増えている状況で、何らかの措置が必要と考えるが、まずは滞納の早い時期に対処できるよう相談・指導体制の強化を求めた。
6月21日(火)
都市整備局
都市整備局関連議案は、震災対策関連の一般会計補正予算案として地籍調査の測量費、玄界島復興計画の調査費、被災した公園の補修の追加、および香椎駅周辺土地区画整理事業における測量のやり直しの補正予算案である。
一般会計では、地震により基準点が動いたため、地籍調査ケーススタディ事業における測量のやり直しの費用が上げられている。地籍調査は明治以来なされているところは少なく、精確な調査が求められている。しかし、時間と経費がかかること、また敷地の境界争いになるなど問題が多いため進んでおらず、福岡市は試験的に地籍調査を始めている。今年は早良区原6丁目、来年は原7丁目を行い、その後郊外地区を行い検討する計画である。地震でずれた基準点は国土地理院が計測し公示される。香椎駅周辺土地区画整理事業においても、換地計画が進んであおり、測量をやり直す必要が生じたため、補正予算が組まれた。伊都区画整理事業等については、基準点のずれは小さく、換地の時点で最終的に測量することで問題はないとしている。
玄界島の復興計画については、県と市による斜面の地盤調査が終わり、測量や土地の評価などが9月をめどに終わるのに合わせて復興計画を立てる予定。斜面の造成により地権者の権利の除去による補償の問題や、公共住宅をどのように建てるのか、個人の住宅の再建をどうするのかなど問題があり、復興は年を超す見通しである。
公園の被害は53ヶ所あり、そのうち緊急を要する8ヶ所は専決により既に補修を終えた。単独事業で行う22ヶ所ついては8月末をめどに行うが、国の補助事業で補修を行う小戸公園、百道浜東公園、樋井川河畔公園は、国の査定を待って行うため11月になるということであった。
そのほか、動物園の震災対策について質問があったが特別に対策がないことが分かった。
2005年6月22日(木)
常任委員会審査報告の後、討論があり、採決がなされた。上程された議案の他、政治倫理審査会から議会に条例改正を求める意見が出されていた件について、議員の後援団体に対する企業・団体からの政治的・道義的批判を受けるおそれのある寄付について受けないようにする項目が加えられた政治倫理条例改正案が採択された。
反対討論
本議会上程の諸議案の内、議案第228号指定管理者の指定について反対し、討論を行います。
この議案は葬祭場の管理を指定管理者にさせ、その指定管理者をくらしの環境財団に指定するというものです。そもそも、葬祭場の管理は公共性が高く直営にすべきであり、また炉の運転・管理等は指定管理者に委託しても別途炉の製造メーカーの関連会社に委託しているのが実態であることからも、指定管理者に管理させる必要はありません。市がくらしの環境財団に委託する理由は、継続性、安定性、低コスト、そしてPFI的手法による経費の平準化をあげています。しかし、いずれもくらしの環境財団でなければいけない理由とは考えられません。なぜくらしの環境財団なのか、説得力ある理由はありません。
直営であればどうしてコストが高くなるのか、それはこれまでの運