4月10日(日)は諫早湾締め切り堤防が閉じられた日を「干潟を守る日」として、毎年全国でさまざまな取り組みをしています。博多湾会議は7名の参加で人工島の視察をしてきました。人工島直轄化までの経過と、当てがない埋立の現状を報告します。
人工島:直轄化まで
・89年 桑原前市長が人工島計画を発表
・94年7月 人工島着工
・98年 山崎現市長が人工島計画を「引き返す勇気を持って見直しする」と公約し、
市長に当選
・99年 見直しの委員会を庁内に設置。12月には工事期間を延長し、従来
通りの計画ですすめると結論
※当時の日本興業銀行はこのままでは100億円の赤字となるので、
福岡市が損失補償をしなければ融資をやめると言っている。福岡市と博
多港開発担当常務が銀行団の説得に動いたことがケヤキ庭石事件の検察
官の冒頭陳述で述べられている。
・01年4月 新生銀行(03年)、鹿児島銀行、あおぞら銀行、博多港開発の融資をや
める。この頃、信託銀行5社も融資をやめる動きが出た。
・01年12月 銀行団の要求で人工島事業計画を見直す。新事業計画策定。
見直し内容
①随時返済(土地が売れたときに融資を返済)から土地張付約定返済(返
済期日に合わせて売却する土地を決め期日に返済返済)に変更
②福岡市が博多港開発に対する200億円の緊急貸付枠を予算化
③福岡市が銀行からの融資に対する保障、福岡市が土地売却を担保
④博多港開発の資本金を4億円から64億円に増資
(福岡市30億円増資 02年に6億円、03年に24億円)
・02年3月 見直し案を議会が承認
計画外の公園を計画、住宅用地を市住宅供給公社が購入
道路を公共事業として市が土地を買い取り整備
・02年11月 市長選挙でケヤキ庭石事件が発覚
西田元市議が衆議員選挙資金を作るために、関係会社にケヤキと庭石
を転売して約5億円もの不正な利益を得ていた。ケヤキは1本30万円
のものを100万円で、庭石は倍の価格で博多港開発に買わせていた。
・03年2月 ①公共工事不正再発防止及びケヤキ庭石購入等調査特別委員会設置
②福岡市は市住宅供給公社が人工島の住宅地購入のための借り入れに ついて銀行に210億円の損失報償をする。(住宅用地に関して150
億円、その他について60億円)
・03年3月 ケヤキ庭石事件のための100条委員会開催
5月 山崎福岡市長、商法の特別背任罪で志岐博多港開発社長と大庭博多港
開発常務を告発
・03年5月 福岡市が博多港開発に45億円の緊急貸付
公園用地(15ha)購入価格が予定価格を下回り、資金不足となる
・03年9月 人工島に宮崎駿監督のデザインを元に「照葉の街」構想を発表
・03年11月 宮崎駿監督が協力を拒否、照葉プロジェクトの破綻
・04年 1月 博多港開発が第2工区の埋立免許期間伸長の手続き
収支計画の変更
集合住宅部分109,400円/㎡、戸建て部分57,700円/㎡
・04年3月 ①積水ハウス・福岡地所グループへ住宅地の一括処分
(最終的には6月25日に売買契約がなされる)
平均価格7万円/㎡、
市住宅供給公社が購入価格は47400円/㎡
道路用地14億円と住宅地売却益47億円、新生銀行等への支払い8億円
を引くと53億円しかならず、銀行団への返済額95億円に42億円不足
し、不足分40億円を福岡市が緊急貸付(福岡市が博多港開道路用地・公
園用地などを購入する資金で返済していく)
②福岡市は新事業計画を見直す。
約定返済の変更は銀行に拒否される
資金調達方法を検討、事実上税金を全面的に投入
いま検討されていることは、土地の証券化、トラスト方式、直轄化
・04年6月 ケヤキ・庭石事件で志岐元助役、西田元市議、大庭元常務を逮捕
・04年6月25日 積水ハウス他住宅計画が示される
6月25日 積水ハウスと市住宅供給が売買契約
7月20日 積水ハウス、九宅協住宅開発、市住宅供給公社と売買契約
・04年9月 ①人工島に小中学校用地取得の補正予算50億円が可決
・小中一貫校、予測児童数が半分にもならないため島外からも通学
・教育委員会でも検討された形跡はない、第2委員会にも報告がない
※土地張り付き約定返済であるため、9月中には返済しないといけない資金
があり、何が何でも学校用地を買わないといけないかった。そのために、積
水ハウスには格の価格で叩き売り、住宅計画を何とか6月25日に出させる
ことで学校用地の口実が出来、ようやく用地取得の補正予算をだした。その
ため、議会や教育委員会に諮る時間がなかったのが真相である。
②博多港開発第2工区直轄化が示される
・04年12月 人工島直轄化のための補正予算399億円が可決
銀行等の協議内容(博多港開発への融資条件は依然と厳しい)
緊急貸付について
100億円の緊急貸付枠の予算化
約82億円の緊急貸付残高を16年度末までに12億円に圧縮する
融資の返済方法
「土地張付約定返済」から「随時返済」に変更
ただし、新規融資については達成目標を下回った場合は事業を見直し、
銀行団の承認を得ることが必要。
達成目標
〔売上高〕 当該年度の売上高が事業計画の80%
〔販売価格〕販売単価加重平均が事業計画における単価の
①当該年度の80%
②2期連続90%
・05年2月 ①人工島の小中学校用地取得43億円(107,500円/㎡)を可決
②人工島直轄化396億円を可決
・05年3月4日 総務省より起債許可通知
・05年3月10日 港湾管理者(市長)から譲渡許可
・05年3月15日 譲渡契約、年度内に支払う。70億円は福岡市に、残りは全て銀行
団に返済。負債約700億円の内約半分が銀行に返済されることになる。
・05年3月18日 300億円をシンジケートローンで借り入れ、96億円を起債
※市長は特別会計で事業を進めるので市民には迷惑を掛けないとの説明。特別会計と一般会計は繋がっていること、また特別会計で埋め立てた土地を一般会計で買い取っていることからもウソである。漠然と人工島は福岡市の将来に必要と言っているが、全国の事例を見れば、成功した例はないばかりか、負の遺産の処理に負われている。市長が誘致するとしている中華街構想は神戸市でも進められているが、神戸市の中国企業は全て土地建物はリースである。人工島の土地が売れないだけでなく、誘致の補助金で多額の税金を使うことになりかねない。市民に役立つどころか、借金が増えるだけである。今回の地震災害復旧に多額の費用が必要であり、人工島に無駄遣いする余裕はない。
※大阪市をはじめ、他都市では特定調停などで銀行の貸し手責任をそれなりに求めているが、人工島に関しては全て市民が借金を負うことになっている。こんな無茶苦茶なことが許されていいはずはない。
外周護岸から対岸の香住ヶ丘を見る。手前の岩礁はコンクリート製である。よく見ると地震の影響でひび割れが至る所に見られる。
菜の花畑で、地震による液状化で陥没した場所。住宅が建っていないため被害がわかりにくいが、液状化は起こっている。