1)28日(金)、緊急申し入れ
去る5月27日(木)付で博多港開発(株)の決算が50億円の赤字になる見通しという報道がなされた。同じ日に福岡市は博多港開発が行っている人工島第二工区埋立事業を博多港開発から譲り受け、福岡市が直轄工事するために国と協議を始めたことを明らかにした。直轄化するためには博多港開発にこれまでの工事費400億円を支払う必要があり、その資金調達のため新たに起債の許可を国から受けなければならない。この2つのことは人工島事業が破綻したことを如実に示すものである。埋立免許取得時(94年)人工島には税金は使わないと言っていたことは完全にウソとなった。私たち博多湾会議は28日(金)に、福岡市が博多港開発代に工区を直轄化することに抗議して、人工島事業を中止するよう緊急申し入れをした。
2)2年も経たないうちに再び計画変更、際限なく税金をつぎ込む計画!
そもそも山崎市長は第1期の市長選では人工島事業を見直すことを公約して当選した。当選した翌2000年1月には市庁舎内で見直し委員会を設置し、その年の12月に事業機関を延ばせば従来通りの計画でうまくいくと結論づけた。しかし、翌年には新生銀行が博多港開発への融資中の検討を始め、2002年4月には新生銀行、鹿児島銀行あおぞら銀行が博多港開発への融資をやめた。残った銀行団11銀行でも事業を危ぶみ、福岡市が博多港開発の事業を担保するように求め、計画変更を迫った。2002年12月28日に福岡市は銀行団に計画変更を伝え、翌年3月議会で議会の承認を得た。
この計画変更は、基本的に博多港開発が埋め立てた土地は福岡市が買い取ることを保障する中身である。具体的には計画になかった公園(16ヘクタール)を福岡市が作る、本来開発者(博多港開発)負担で作るべき道路や公園を福岡市が公共事業として整備する、民間に売れない土地は福岡市が公共施設を作る(子ども病院を移すなど)というものである。
さらに、銀行はこれ以上貸付を増やさないために、返済契約をこれまでの土地が売れたときに返済する随意返済から、土地が売れなくても期日が来れば返済する約定返済に変更した。その結果土地が計画通りに処分できないときには資金繰りが行き詰まることになる。そこで、福岡市は計画的に土地処分をするために、福岡市住宅供給公社に土地を計画的に買わせることにした。同時に、銀行がこれ以上の融資をしないために銀行に替わり、博多港開発が資金不足に陥ったときには福岡市が博多港開発に貸し付ける資金200億円を予算化した。地価が下落し続ける中、2003年度には予定通りの価格で土地処分が出来なかったために、福岡市は2003年5月には45億円、2004年3月には42億円の緊急貸付をした。
3)いよいよ直轄化、すべてが市民負担となる!
もはや計画通りに事業が進まないことは明らかである。福岡市は計画変更してわずか2年経つか立たないうちに新たに計画変更せざる終えなくなった。福岡市は土地処分が難しいことから、「土地の証券化」、「トラスト」、「直轄化」を検討するとした。しかしいずれも、最終的には福岡市が事業をすることになり、市民の負担となる。銀行は事業を確実に進めるために、福岡市に直轄化を求めている。直轄化を求めているのは、人工島の住宅地を買うことになっている積水ハウス・福岡地所グループも同じと考えられる。積水ハウス・福岡地所グループは未だに土地の売買契約をしていない。いまあるのは6月までには土地を買うという協定書であり、人工島の事業見通しが立たなければ正式に売買契約はしないと思われる。博多港開発の第2工区がどうなるのか、それによって住宅開発が出来るのか否かが決まる。また地下鉄が繋がるのか、小中学校が建設されるのか、すべて第二工区の事業にめどが立つのかに係っている。
福岡市は今年(2004年)1月23日に博多港開発に埋立免許伸長の許可をした。公有水面埋立法によれば、免許伸長を許可できる条件に、事業者の事業継続能力が求められている。博多港開発が題した書類の土地売却益は、ウソの固まりであった。免許許可直後に売られた価格が大幅に下がっており、福岡市が42億円の緊急融資をしなければいけない事態になった。そもそも事業継続能力がないにもかかわらず、粉飾された書類をもとに埋立免許伸長の許可をしたことに問題がある。その場しのぎで破綻と取り繕い、銀行にも見反され、直轄以外に選択がなくなっている。
4)人工島にこれ以上税金投入は許されない!
直轄化するためには博多港開発にこれまで投入した工事費400億円を市はう必要があり、さらに今後の工事費350億円といわれている費用が必要である。費用はこれだけではすまない。道路や公園の整備、さらに売れなければ公共施設を作ることになりかねず、数千億円の費用が必要となる。その結果、市民に一体どれだけ還元されるのだろうか。市民の意思とは関係なく人工島に数千億円の税金が使われ、それが市民の役に立たないとしたらこの責任は誰が取るのか。借金だけが残り、将来の世代に大きな負の遺産を残すことになる。
今年3月の予算特別委員会では、財政局長はかって福岡市が経験したことがない厳しい財政状況路答えている。2003年度中期見通しに基づき、一般会計は161億円支出を削減し、交付税・補助金削減によりさらに基金を115億円取り崩した。財政調整に使える基金はわずか67億円しかない状況である。このような財政状況で、どうして400億円もの借金を新たにつくることが出来るのか。そしてその後も数千億円もの税金をつぎ込むことが出来るのか、市民が納得できるはずはない。
市長は人工島事業が失敗していることを認め、人工島計画をとめるべきである。そして、破綻が明らかな博多港開発を会社精算し、福岡市も銀行も応分の責任を取るべきと考えている。市長自ら責任の所在を明らかにして責任を取る、その上で今後人工島をどうするか時間をかけて議論すべきである。